思い出

不思議な美容師さんに会った。どんな髪型にしたいか、好きな写真をメールで送ってくれと言う。女優さんやモデルさんや、ヘアカタログの写真でなくてもいいと言う。それは助かる。だって、「えー? こんなふうになれると思ってるの?」と思われそうで恥ずかしい。

私は前から欲しいと思っていた鉄瓶の写真を送ってみた。鉄瓶にしては小ぶりで、茶色で、なつめのようなかたち。生真面目に作られているから数もなく、高価で手が出ない。でも、庶民の道具っぽく見える。友だちになれそうな、この感じ。好き。

古民家の土間に鏡と椅子を置いて、ヘアカットが始まった。剃刀でじょりじょりと私の黒髪が削られていく。余分なものがどんどん削がれていく。軽くなる。明るくなる。いっそ丸坊主になってしまいたい。いや、それはないか。頭を守るという機能が髪の毛の本質だったとしても、機能だけじゃ、ね。遊びが欲しいです。余分なものがあったほうが楽しいです。自然な気もします。

手鏡を渡され、大きな鏡を振り返る。高校の頃「猿みたい」と言われて以来、封印していたショートカットの私がいた。あのときは笑われたなあ。でも、今日は別の意味で笑える。くせ毛の自分も好きっていう笑い。

江戸鉄瓶