ひどく暗い気持ちで夜市に出かけた
声は通らないが
酒も飲めないが
人が振り返るほどの大声を出して
屋台でビールなど売ってみたい
売り子さんを見て、そう思った
リズム感はないが
信心深くもないが
雷かと思うほどの強さをもって
櫓で太鼓など打ち鳴らしてみたい
夜神楽を見て、そう思った
眩しい憧れと湿った卑屈が
まったく同時にやってくる
今日はあかんかー
“ドウセマン”やなー
帰りかけたら夜空に飴が降った
こちらにも飴をくれ
こちらにも福をくれ
老若男女が恵比寿さんに飴をせがむ
こんな私もちゃっかり両手を伸ばす
さあ、くれ
夢中で握った手のひらを開き
飴をみつけて、すこし笑った
お ま え も 囃 す 側 に 立 て
そう言われた気がしたから、もう正解
せやな、囃されたい、ばっかりやな
櫓の恵比寿さんに手をふった