出発 / DIALOG IN THE DARK

ぐーぱー ぐーぱー

握っても開いても手が見えない

ぱちぱち ぱちぱち

何回まばたきしても何も見えない

光の残像すら映らない

 

純度100%の暗闇

 

あの白い杖をつきながら

目の見えないガイドさんに連れられて

はじめて会った人たちと暗闇を探検する

 

しみも、しわも、たるみも

見た目のコンプレックスは全部帳消し

 

あー、なんて楽なんだろう

ここでは声と言葉の美しい人が美人なのだ

いろいろシャッフルなのだ

 

「これは誰?」

「段差があるよ」

「私の肩につかまって」

「うわっ」

 

表情も、しぐさも、アイコンタクトも

目で空気を読めなくても問題なし

 

あー、なんて楽なんだろう

ここでは喋ることが人助けにさえなるのだ

いろいろシャッフルなのだ

 

ある人は、明日、飛行機で東京を発つといい

ある人は、来年、中学校を卒業して次の進路へ発つといい

ある人は、最近、起業して新しく出発したばかりだといった

 

私は、三人の話を聴きながら

終わりは始まりだと思っていたけれど次を待っているだけじゃ単なる終わりに過ぎないのであってそれは自動的に始まりになるわけでもなく自分で向かっていかなきゃ出発とはいえないじゃないかそうじゃないか

ということがなんだか一瞬でわかった

しばらく話を聴いているわけだから一瞬ではないはずなのだけどそれでもやはりわかったと感じるのは一瞬なのだった

今日はこの人たちの美しい言葉を聴くために来たんだと思った

暗闇だから落っことさずに受け取れた

 

DIALOG IN THE DARK

私に語ってくれた彼と彼女たちへ

ありがとう