扇風機と蝉
まぶたで蓋
助手席から見たサングラス
サングラスからはみ出した涙
三粒ぐらい財布に入れて
ひとりで降りた
「私の前で泣いたらええやん」とは(言わないが)
寝返り
きしむ
最後の背中
どんなに触れたところで
この皮膚一枚からはみ出せない
まるくなる
胎児みたく
「いつかはこの網から出ていかな」やろ(せやなあ)
那覇から58号線
窓から見た基地
基地からはみ出した血
一滴も払わずに
贅沢をして帰ってきた
足の親指
網つまむ
58号線から知らない道
ひとりで降りたさとうきび畑
さとうきび畑からはみ出した虹
風が吹いてた
風は吹いてた
蝉と扇風機
まぶたで幕、をあける