トマト

テーイテイテイ ヂッタボ グン

ある夏の朝早く、日の入り町の人たちが目を覚ましてみると、山のてっぺんがえらいことになっていました。針山に刺した待ち針のように、大きな大きなトマトがどすこいと山にのっかっているのです。

「見た?」

「見た、見た。おばけトマト!」

蝉がヂヂヂと鳴き出す頃には、町中が大騒ぎ。どうしよう、どうしよう、日の入り町の町長さんはふるえる声で山向こうの日の出町に電話をかけました。

「もしもし。おはようございます。ええ、そうなんです。なに? 食べる? トマトと見せかけて爆弾だったりしたらどうするんです? それにあんな緑色のトマト、かたくて食べられるわけがないでしょう。」

「まあまあ、落ち着いて。どう見たってトマトよ。大きいだけでなんにもこわがることないわ。真っ赤に熟して、おいしそうな匂いまでしてるじゃない。ちゃんと見ました? もしかして寝ぼけてる?」

日の出町の町長さんは、そう言ってふふふと笑いました。日の入り町の町長さんはおもしろくありません。

「そちらこそ大丈夫ですか。食いしん坊のあなたのことだ。お腹が空いていて、緑色のトマトも赤く見えたんでしょう。」

「なんですって? ふるえる声で電話してきたくせに。絶対に赤!」

赤だ、緑だ、とお互いにゆずらず、ふたりの町長さんはどんどん腹が立ってきました。そんなに言うなら確かめようじゃないか。赤なら食べる。緑ならつぶす。というわけで、三日後のお昼に山のてっぺんで決着をつけることになりました。

さて約束の日のこと。日の入り町からも日の出町からも、たくさんの人がおばけトマトをめざして山に登りました。日の入り町の人たちはトマトをつぶすための火薬や鉄砲を持ち、日の出町の人たちはトマトを食べるための包丁やお皿を持ち、汗をかきかき深い山の奥へと分け入っていきました。そして、山のてっぺんに着くと……みんながみんな口をぽかんと開けて、それからはずかしそうに大笑い。

なぜって、そのトマトはきれいに二色に分かれていたからです。日の入り町のほうのはんぶんが緑色で、日の出町のほうのはんぶんが赤。だれもまちがっていませんでした。ふたりの町長さんは仲直りの握手をして、ふたつの町の人たちはトマトのまわりを踊り歩いてお祝いしたそうです。トマトは……きっと赤いところを食べたのでしょうね。緑色のところはピクルスにでもしたかしら。

テーイテイテイ ヂッタボ グン オヒョイヒョイ