ほんものの一行

となりで子どもが寝ている
すべてあたたかく包みこまれている

なのに、心から血が流れつづけている

「もう済んだこと」
「子どものために」
「考えない、考えない」

日本列島の専業主婦は
どの一行をにぎりしめれば
このふとんから出ていけるのか

南極大陸の探検隊長は
どんな一行をにぎりしめて
その寝袋から出ていったのか

「シャクルトンに比べればなんでもない」
「生きているだけでありがたいんだから」
「今日が人生最後の日だったらどうする」

死者たちは
どんな一行を抱いて
この世から出ていったのか

 

「いいや。こっそりシュトーレン食べちゃえ」

今朝も、とりあえずの一行で