おはなしの公演「花と雲」によせて

それ言いたいだけやん

というツッコミがありますが

ほんまそれ! 言いたいだけやねん、と思います。

わたしはいつだってなにかを言いたかった。

連呼したかった。

 

小学生のころ

ふつうのイントネーションを壊して

レレソという音程で「こわい」と繰り返すのが流行ったり

「なにげない新聞」とか「なにげないスパゲティ」とか

とにかくあらゆる単語に「なにげない」とつけて

どの組み合わせがおもしろいか競ったり

 

友だちとの交換日記で

「げろげろっちゃんぴー」という謎の呪文が生まれ

「肉質ごついです」と自己紹介する架空の女の子が生まれ

毎日のようにその言葉を口にして笑い、書いていた。

 

毎日のように交換していたのは

意味ではなく“音楽”のようなものだったと思います。

 

「肉質ごついです」と言うときに

どうしたらその「ごつい」感じが出るのか

高い声で言ってみたり、間をとってみたり

「ご」という音に重点を置いてみたり……

何通りもの言い方を試してはげらげら笑っていた。

 

それと、今、わたしがしていることは

なにも変わらない気がします。

 

 

もう「て・・・3」というような車のナンバーを見て

笑うような感受性は埃をかぶってしまいましたが

初めて「言語造形」という文字を見たとき

連想したのはカフカの小説「変身」の主人公

「グレゴール・ザムザ」でした。

 

なんてすごい濁音の響き

漢字も、カクカク、直角、四角

ブロンズ彫刻のような重みと厚さ

 

だからなに?

 

と思われるでしょうか。わたしもそう思うんです。

だからなんなのか知りたくて

言葉と人間のあいだで

なにが起きているのかまるごと感じたくて

書き手になり、語り手になり、聴き手になり

言葉と遊びつづけて生きているのかもしれません。

 

今のところわたしにわかっているのは

書くのも、語るのも、聴くのも

自分にしっくりくる言葉に触れると

 

とてもすっきりする

 

という単純なことです。

どこかいいところに近づいている、と感じます。

 

意味がわからないのに泣けてくるようなとき

言葉はわたしのなかで音楽になり脈動になり

深いところから強烈に揺さぶりかけてきます。

 

それは昔話でもテレビでも映画でも

文学作品でも日常会話でも、わたしには同じです。

 

 

今回の公演では

東京・高尾山の昔話「天狗わらい」を武州弁で

自作の「たま地蔵」を自作の方言で語ります。

 

わたしにとっての「花と雲」=なつかしさ=方言

を数ヶ月かけて感じてみようと思いました。

 

わたしは名古屋生まれの

横浜・大阪・神戸育ちで

東京にいちばん長く暮らしています。

 

おしゃべり王国の関西に帰ってもっと笑いたい

でも、東京も大好きだから帰りたくない

という葛藤が今でも少しあります。

 

関西弁という言葉への情と

故郷への情がくっついているのです。

 

今ではほとんど廃れてしまった旧武藏国の方言

武州弁で「天狗わらい」を稽古していると

武州弁の素朴で粗野な響きとリズム感が

田舎としての東京をよみがえらせ

これまでにない親しみと情を運んできてくれます。

 

さらに、どの言葉からも、どの土地からも

自由でいられるだろうかという試みとして

「たま地蔵」は方言という道具から

つくってみようと思いました。

 

 

とはいえ、言葉遊びはライブです!

 

遊び相手がいてはじめて飛び出すものがあります。

繰り返し練習しつつも、テキストを完全に固定しないで

あとは、当日、その場の雰囲気で語ってみようと思います。

ぜひ一緒に遊びにいらしてください。

 

聴いてくださるみなさんと一緒に

「花と雲」の語り手仲間と一緒に

意味ではなく“音楽”のような“交換日記”を

ライブでできたらうれしいです。

 

たとえば

夫婦喧嘩をしているリビングと

赤ちゃんの寝息と子守唄が聞こえる和室とでは

まったく雰囲気がちがうように

 

響きが空間をつくる

 

方言が故郷をつくる

 

ことばがこころをつくる

 

そういうことなのかなあと楽しみにしています。

 

いや、どうでしょうか。

ちょっとそれらしいこと、言いたいだけ、言ってみたいだけかな。

 

おはなしの公演「花と雲」vol.1 詳細はこちら

 

 

 

 

 

 

 

 

古金谷あゆみ(こがねやあゆみ)

2005年よりヨガインストラクターとして活動し、徐々にヨガ関連のライターに転向。最近は、瞑想と書くことが「聴く」という一点でつながっていると感じ、そのあたりを探検中。高尾599ミュージアムなどで東京・高尾山の昔話を語るほか、「ひびきをお料理する主婦ユニット『林檎の木』」としてイベントなどに小さな音楽劇で詩と物語をデリバリー。yoggy magazine onlineにて「わたしにかえる時間」連載中。